2023年12月04日

「正派創始百十周年記念演奏会」

令和5年10月26日()
於: NHKホール
二代目正派家元 中島靖子 三回忌追善
正派創始百十周年記念演奏会
が行われました。

全国から正派邦楽会会員が集まり、北海道からも78人が参加しました。

公益財団法人正派邦楽会は生田流箏曲の流派のひとつで、箏曲家で組織する会としては最も大きな団体です。

演奏会のチラシ・演奏会プログラムの表紙は 版画家 棟方志功 の作品で初代家元と大変交流が深く、初代家元 中島雅楽之都 著「禅と音楽」(昭和36)も装幀は棟方志功でした。

演奏会は午前11時開演で終演は午後8時15分予定となっており、長丁場かつ平日の開催でしたが、ありがたいことに沢山のお客様のご来場でした。

私は「石狩川()「二つの舞曲」に出演しました。
思えば夏の暑い中の合奏練習でしたが、感慨にふける間もなく曲が始まってしまえばあっとゆうまでした。

司会の元NHKアナウンサー  葛西聖司さんは当日朝のリハーサル時から私達が座っている3階席にもお声がけや手を振ってくださり士気を高めてくださりました。

この先このような大きな演奏会にあと何回参加できるかわかりませんが、日々精進してまいります。

宮崎 厚美
(
雅号:宮崎 雅楽悦美)



2023年11月27日

《歌で紡ぐ不思議の国》

芸術の秋を迎え、今年も函館市民文化祭(11/5〜11/19)が開催されました。
市民の文化芸術の発表の場として、また市民が文化芸術を身近に親しむことが出来る秋を彩るイベントとして親しまれています。
私もアート展や舞台公演、市民オペラを鑑賞してきました。

函館市民オペラの会は「不思議の国のアリス」(木下牧子作曲)
キャスト•合唱•裏方まですべて地元市民による公演で、今回は初めて邦人作曲家による現代音楽作品でした。
♪この作品は「モーツァルト劇場」20周年記念作品として2003年に初演。
「大人から子どもまで楽しめる遊び心に満ちた日本語オペラ」を作ろうと木下牧子氏に作曲委嘱作品。数々の音楽賞を受賞した高い評価を得てきた日本語オペラ♪

次々と奇妙なキャラクターが登場し、現代音楽ならではの不協和音多用、難解な音色のハーモニーで不思議の世界を表現していました。

知人も出演していたので、練習の苦労話は聞いていました。
出演者•オーケストラの方々が、現代音楽の音程•リズムなどの技術的難しさを感じて一生懸命このステージを作り上げている!と観客席で感じながら鑑賞していました。
出演者•裏方など約90人、観客約900人で「不思議な国」を楽しみました。

芸術の秋を感じていたら、一面の冬景色。今年も素敵な思い出を残して過ごせる様に、12/1から始まる「はこだて冬フェスティバル」ベイエリアの海上に浮かぶ巨大クリスマスツリーで1日3回15分赤色一色に点灯するプレミアムレッドツリーに足を運んで眺めて、素敵な思い出を残したいと思っています。

皆様も気温差が激しい日々ですが、体調に気を付けてお過ごし下さい。

                             菅原真希子



2023年10月02日

《父と音楽》

私が生まれて初めて聞いたクラシック音楽は、フルトヴェングラー指揮ベートーヴェン『交響曲第九番合唱付』だ。

 

大晦日は家族で『第九』を聞き、その後にドヴォルザークの『新世界』を聞き、終わったら「あけましておめでとうございます」が我が家の恒例だった。

 

幼い私は第九は何とか聞いていたが新世界の二楽章家路になると眠気もピークで四楽章だけは覚えている状態だった。

 

小学高学年になる頃、紅白歌合戦の後半は見れず母と「たくさんお酒飲ませて寝かせてしまおう」等色々あの手この手で計画したがいつも失敗。強制されたわけではないが単身赴任が長い父が楽しみにしていて「さあ、良い年を迎える準備をするよ」という言葉を子供ながらに叶えてあげなくてはと感じていたのかもしれない。

 

父は亡くなる1年程前に「チェンバロを買ってやるから葬式に弾いてほしい」と言い出した。流石にそれは無理だよと断ったが本気で言っていたのかどうなのか。発表会が近かったので「ピアノの練習してるから心配しないでね。ちゃんと近くにいるからね。」と言ったら軽く頷いてくれたのが最後だった。

 

チェンバロは弾いてあげれなかったが私のピアノを聞きながら安心してくれたのが何よりの親孝行だったかなと自分に言い聞かせている。最近そんな父との思い出がよみがえる。

 

今月10月末に父の1周忌を迎える。

 

『お父さん私に音楽の素晴らしさを教えてくれて、そしてピアノを習わせてくれてありがとう』
                                  増岡 深雪



2023年09月03日

『生の音』

今年初めて経験したこと、それはプロ野球観戦。

今まで全くと言っていいほどスポーツに興味がなかった私が今年3月のWBC

TVで観ているうちにすっかり野球の魅力にハマってしまったのだ。

日々の練習を重ねて試合に挑んでいる選手たちが試合の中でその一瞬に力を発揮する真剣な姿。

これは楽器を演奏する時と相通じる。たくさんの練習をして最高の音を出す一瞬の連続。

そしてエスコンフィールド北海道が出来たことも私の気持ちに拍車をかけた。

 

かれこれ生で野球を見たのは高校時代の全校応援の時だけ。

いざ観戦しようと思ってもわからない事だらけ。

3度球場へリハーサル(下見)に行き、念入りに準備をしてやっと1回目の観戦が実現。

そこで感じたことはやはり生で観る、体感することの大切さ。

グローブがボールをキャッチする乾いた音、バットがボールを宙に浮かせる硬い音、応援団の威勢のいい楽器の音、観客席の声援、様々な音が重なってその場でしか味わえない感動がそこにはあった。

この何ともいえない空間を体感したくてその後も野球観戦に出かけています。

 

コロナ禍のおかげ?でいろんなライブ、コンサートを気軽に配信で鑑賞できるようにはなったけれど出来ることなら生でその臨場感を味わうのが一番だなぁと実感。

まだまだ残暑厳しい日が続いていますが今年の【芸術の秋】は是非、気になる会場に足を運んでみてはいかかでしょうか? 

             

 

                              苫小牧市 齊藤由紀子



2023年08月03日

“変わっていくものと変わらないもの”

思い出したように急にピアノが弾きたくなり連絡をくれる生徒(30代)

 私の好きな曲っていうかアップルミュージックで聴いてる曲なんだけど

 

1.ラブストーリーは突然に/小田和正
2. Winter,again /GLAY
3. Love Phantom /B
z 
4.
白鳥の湖第2幕の有名な部分
5.
男のくせに泣いてくれた/森田童子 
これがトップ5なんだけど共通点ない?!

 

正解は、コード進行にありました。

AmFGCVImIVVI)   「6451進行」
小室哲哉さんが愛用していることから、「小室進行」とも呼ばれているそうです。

 

そして私は、

 

1. I Love/ Official髭男dism

2. TAKARAJIMA(宝島)/ THE SQUARE

3.接吻/オリジナルラブ

4.夜に駆ける/YOASOBI

5. Grover Washington Jr.

 

何故か心惹かれておりました。

 

そして、王道のカノン進行

 

CGAmEmFCFG」が基本のコードです。

 

1.カノン/パッフェルベル

2.クリスマス イブ/山下達郎

3.ハナミズキ/一青窈

4.さくら/森山直太朗

5.Pretender/ Official髭男dism

6.アンダー・ザ・シー

 

合唱曲は、この進行で書かれているのが多く、メロディーに吸い寄せられるごとく、選曲しておりました。

 

さて、皆さんは、どんなメロディーに心惹かれますか?

 

 

 

2023/07/31    大内 幸代



2023年07月03日

8月6日(日)開催!「記念演奏会」

ようやく演奏会が以前のように開催されるようになってまいりました。

~つなげよう!箏・三絃・尺八の輪~

北海道三曲連盟創立50周年

札幌三曲協会創立80周年

「記念演奏会」が8月6日()開催されます。

ジュニアの曲は2曲あり、ゲストの尺八奏者の藤原道山さんと合奏する「六段の調」

そしてFORUM in 国際音楽の日 2019 北海道」で基調講演と札幌西高校生と合奏してくださった橋本みぎわさん作曲の「龍星群」

 

5月には講習会とミニコンサートのために来札された橋本みぎわさん、木村麻耶さん、光原大樹さんが、演奏するジュニアメンバーに直接指導してくださいました。お忙しい中、大変丁寧に熱心に指導いただきました。

プロの演奏家と一緒に舞台で演奏したり、作曲者による直接指導は、演奏する子供たちにとって技術だけではない、心で音楽を感じ楽しむ良い機会ではないかと思っております。

 

当日素敵な音楽を届けられますように!

5月:橋本みぎわさん、木村麻耶さん、光原大樹さんによる指導

 

↓ 札幌三曲協会

http://sapporo-sankyoku.com/

 

 

   河上 満寿美



2023年06月03日

「もう戻れない?」

妙に暖かかった3月、気温の乱高下が激しかった4月、それによって乱れがちだった体調復帰に努めた5月・・。皆様、お変わりなくお過ごしでしょうか?

 

前回私が担当したコラムに引き続き、今回も本箱から久しぶりに引っ張り出して読み耽ってしまった一冊についてお話ししようと思います。

 

「仏教が好き!」河合隼雄×中沢新一 朝日文庫

 

対談集です。

 

河合隼雄(1928-2007)

日本人として初めてユング研究所にてユング派分析家の資格を取得、日本における分析心理学の普及、実践を行いました。「箱庭療法」「文化庁長官」などの言葉でご存知の方も多いと思います。

小樽市民の私は「特定非営利活動法人・絵本児童文学研究センター名誉会長」として、雲の上の人でありながら、身近な存在でもありました。

 

生涯学習に対しても、多くの示唆を下さいました。

「能率や効率第一と考え、すべての大人が時間どろぼうにだまされていた時、少女のモモだけが、ことの本質をしっかり見ていたのである。「モモ」を読んだ後で、われわれはモモの目を借りて、自分の生活全般を見直してみる必要がある。そこで得たことを基にして、自分の生き方を変えてみる。このような努力をすることが、生涯学習(教育)というのにふさわしいであろう。」

1993年、絵本児童文学研究センターに寄せた一文(抜粋)です。受け身ではない生涯学習のあり方を示してくれています。

 

中沢氏との対談の中で、現在(この年齢になった私が)新たに興味深かった部分を抜き書きしてみます。中沢氏がたくさんの題材を投げかけ、河合氏が相槌を打ちながら、きちんと共通理解が成立しているという、とても気持ちの良い対談です。

 

・ヨーロッパの人に「頼りになるものは何か?」と質問したら「お金だ」という答えが返ってきた。

・例えばドルが流通できるということは、ドルがすべてを支配していると言えるほどになってしまう。→お金が一番強いものになりつつある。これが「安心立命」ではないことを皆は気付いているにもかかわらず・・。

・なぜ人間が貨幣を作り出したか?

→価値を持ったものが壊れていく、風化していくという事態を恐れた

→だからそれを金貨にして、これは変化しにくいものだから、これを持ち歩けば価値は滅びず、蓄積もできるし持ち運びもできるというので貨幣が生まれた

・貨幣が初めて作られたとき、ギリシャのミダス王が「貨幣は大地を殺す」と言ったという。

・もしかするとこれは一神教の文化なのかもしれない・・・。

 

そこから仏教の話題に飛んでいきます。心地よい裾野の広さです!!

 

(続き)

・仏教はそもそも「あらゆるものは滅びる」「諸行無常」からスタートしている。

・永遠について語っているが、それはこの世界にはない

→涅槃(ニルヴァーナ)=煩悩のない状態=

→つまりこの世の幸福に執着している人が行きたくない場所

 

そして「幸福論」に飛びます。語り始めは「脳の構造」から・・。

 

・脳の構造は2万数千年前(氷河期)に作られた。

→ハングリーな時代に無理やり飛躍して、人類は今のような脳を持つようになった

→その脳をずっと駆使して物理学をやったりコンピュータを作ったりしてきた

→経済のシステムも、おなかを空かせている時代に作られた理論だったりする

 

・そこから「幸福」についても考えてきたので、あらゆるものが曲がり角に差し掛かっている。

人間はそれを乗り越えるために、今までの方法をもっと進めようとしている

→だから余計におかしくなる

 

山頭火みたいに歩いても、今の時代「清貧」になりようがない・・とも言います。そして・・

 

・「声に出して読みたい日本語」、音読にたえる「いい日本語」は貧乏な時代に書かれている。

・日本人の倫理、宗教などは物が少ないことを前提として、そのシステムを作ってきた。

→物があふれて、言葉が貧しくなった

 

さて、人間の脳はこういう進み方がベストだと信じてここまで来たのでしょうか。

私たちが子どもの頃、世の中は「サザエさん」でした。子育てをしていた頃、世の中は「ちびまるこちゃん」になりました。そしてそのあと「クレヨンしんちゃん」へと変化していきました。私が尊敬する僧侶にして哲学者の南直哉さんは「これから生まれてくるアニメは単身家庭のものだ」と言っています。

 

物があふれ、音楽ですら大量消費の対象になり、言葉はどんどん貧しくなり、深い部分から警鐘を鳴らしてくれる人生の先輩たち(私たちの思考の土台を作ってくれた作家や音楽家や研究者)が相次いで亡くなっていることに、たまらない心細さを感じます。

 

それでも人間は立ち止まったり戻ったりはできない生き物なのでしょうか?

もう戻れないとすれば、私たちは何をしなければならないのでしょう?

この本を買った2008年には実感のなかった思いです。

 

一年で一番日の長くなる季節、意識して心の光合成をしましょう。

 

ではまた。

佐藤 径子



2023年05月01日

「令和5年度定時総会を終えて」

去る416日(日)かでる2.7において3年ぶりの対面での総会が実現致しました。

正会員9名、賛助会員4名、ご来賓株式会社エルム楽器社長の渡邉あゆみ氏の出席で総勢14名となり充実した会議が開催できました事、感謝致しております。

会場での会議は久しぶりで最初少し戸惑いましたが、演台を設けて発表者は前に出ていかにも『会議』という形をあえて取らせていただきました。

『なんだか緊張するね」 久しぶりに味合う心地良い緊張感、みなさんと共有できたのでは?と思っております。

実際に人が同じ空間に集って、共通の志の話し合いをする会議、コロナ禍以前は当たり前だった事が特別なことになってしまったのです。

会議のみならず、たくさんのあたり前がプレミアついてますね。

今の北海道は、鳥インフルエンザによる卵の欠乏でしょうか。

人間は愚かにも当たり前にあるもの、出来る事を疎かにしてしまいます。

色々な試練はやはり人々への気付きの警鐘かもしれません。

人は今後この経験を糧に前を向いて進んで行かなければならないのです。

今、私達指導員に求められている事は何か?をチームで模索して行けたら良いですね。

 

そして、音楽の裾野を広げていくという目標を持ちつつ、ほっこりとした優しいグループでありたいと願っております。 

 

 

LLM 代表 高橋和恵



2023年04月01日

『最近見たものと見かけなくなったもの・・・』

 

WBCの熱が冷めない323日、ES CON FIELDのスタジアムツアーに行ってきました。

 

 ファイターズガールがボールパーク内を案内してくれる1時間ほどの見学会です。「プレミアムツアー」と「ベーシックツアー」があり、今回は旅行のお仕事で行きましたので、選択権はなく残念ながら「ベーシックツアー」でしたが、楽しんできました。

 解放感あふれる球場でいよいよペナントレースも開幕となり、個人的には伊藤選手に期待を膨らませています。開幕と言うものの、昨今の施設には幕がない・・・解放感のある施設が増えたのと、反比例して幕がある会場は減ってしまいました。

 

 私は、何故かテレビでお相撲さんの「化粧回し」を見ると私は緞帳を思い出してしまいます。もともとは江戸時代に紀州藩の殿様がお抱えの力士に活躍のごほうびとして贈ったのが起源とされていますが、シルクの刺繍が施されたものは豪華なものです。(最近はアニメの柄の化粧回しもありましたが・・・)

 話が脱線してしまいましたが、和楽器奏者は何となく幕間をお見せするのに抵抗があり(個人の意見です)、緞帳があると安心し、「緞帳上がります」の声を聴くと演奏に入る心の準備が整う思いがあります。

 

 しかし、そんな頼りになる緞帳が減りましたが、配信などのツールが増え、加工の技術の多彩化などにより、見せるところ、見せないところ、を切り分けることができるようになりました。

そんな加速度的時代変化について行くためには、私も緞帳を懐かしんでばかりいては、はダメなのかも知れませんね。写真は新庄監督考案の監督席です。
                                              飯村 千絵



2023年03月07日

駒澤大学附属苫小牧高校 吹奏楽局

 全国的に吹奏楽で有名な「駒澤大学附属 苫小牧高校」
ここ3年間コロナの影響でホールには関係者しか入れませんでしたが、
今年は一般客もホールに入ることができ、私も数年ぶりに楽しんできました。

演奏、マーチング等、コンクール全国大会に何度も出場している高校です。
演奏の素晴らしさ、息のぴったり合ったマーチング、鳥肌が立つほどの感動でした。

「元気」と「感動」と「希望」と「若さ」を頂いたこの演奏会。
また経験したことのない方には是非足を運んでいただきたい演奏会です。

ただし、発売と同時にチケットを取らなければすぐに完売になるので、ご注意を!!

                                  苫小牧市 藤下 淑子




2023年02月07日

3つの楽器デビュー

息子は今年3月にA高校を卒業予定です。

総合学科と言う北海道の公立高校には珍しく、音楽か美術を選択して芸術も学べる学校です。

息子は2年生から音楽系列を選びバイオリンとピアノを専攻する事にしました。

 

 バイオリン未経験の子が卒業時に、どこまで弾けるのか楽しみでした。音楽の授業は週に8時間あるそうです。12月毎年行われれる芸術学習発表会が、カナモトホールでありました。

 40名の管弦楽で、彼は第一バイオリンでした。サンサーンスの動物の謝肉祭、ヴェルディのアイーダなど3曲を頑張って演奏していました。親バカですが、ほほぅやるなー、よく長い曲が弾けるものだなぁーと感心しました。

 

 そして生徒達がまとまりがあり客席まで何かが伝わってくる演奏で、感動を受けました。きっと卒業しても一人一人の良い思い出になる事でしょう。

 その他に放課後は、軽音部でベースやギターにも挑戦していました。

 全道で準優勝し、東京都での全国大会へ駒を進められた事は高校生活での宝物になる事と思います。我が子が高校生活で3つの弦楽器を、かじる事が出来た事、息子にとって音楽に満ちた高校生活を送れた事を嬉しく思います。                                                                                                                                                         戸借 聡美 

 



2023年01月01日

『人間はどこまで動物か?

 

あけましておめでとうございます。

コロナに翻弄される日々はまだまだ続きそうですが、今年も我が道をじっくり歩いていきましょう。

 

さて、10年ほど前に本を大量に処分しました。私の根っこを育ててくれた知識の泉を処分するのは断腸の思いでしたが、同時に風通しの良くなった快さも感じたのを覚えています。

その際、今後もそばに置いておきたい本は残してあり、昨年後半ぐらいから改めて読み始めました。そして、決して理系ではない私の本棚に、動物行動学者日高敏隆さん(19302009)の著書が数多くあったことに驚いてしまいました。

 

今日はその中から「人間はどこまで動物か?」という本についてお話しします。オクツケを見ると平成18121日発行とあります。

 

<要約>

戦後、動物としての人間のことをカタカナでヒトと書くことが始まった。これは他の動物の例にならったものである。人間もサルやイヌと並んでヒトという動物であることを示してくれていた。ところがある時から「人間には文化があり、言語があり、思想があるのだから、単なるヒトではない」という認識に発展していった。「人間はどこまで動物か?」という問いかけが持つスケール(尺度)1本しかない。その1本のスケールの上にいろいろなものを並べて。どこまで到達しているかという発想に問題がある。これは、1本のスケール上での到達度を問題にしようとする、近代の発想の呪縛に他ならない。先進国と発展途上国という言い方や偏差値の例にみられるように・・・。「イヌはどこまでネコか?」とは言わない。どこまでという違いではなくて、ベクトル(方向)の違いである。

 

 

社会生活をしていると「近代の発想の呪縛」に必ずや捉われてしまいます。ましてや職業として楽器演奏を含む音楽を選んでしまった以上、この1本のベクトル思想なしに練習の日々を送るのは不可能であるとさえ思われます。そしてそのように自分を追い込むことにより、自己肯定感が失われてきた部分があるとも感じました。高齢者と呼ばれる年代にさしかかった今、練習やレッスンを始め、日常生活の中にさまざまな角度からの見方が必要だなと改めて深く感じました。

同時に、私自身の本の読み方の傾向にも気付かされました。たとえ小説を読んでいる時も、物語の世界に没入する読み方ではなく、「考える方向や、それをもとに発想を広げていける言葉」を探して読んでいることがわかったのです。

 

さあ、今年はどんな言葉に出会えるでしょう。出会った言葉を自分の中にゆっくり落とし込みながら過ごしていきたいと思います。

 

皆様のご多幸とご活躍を心からお祈りいたします。

 

佐藤径子